2017/09/18

相続で失敗やリスク回避する為に知っておきたい相続手続き期限

 

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遺産相続手続きには期限があります

相続では、財産が多い少ないに関わらず、やらなければならない届け出、手続きが意外に多く煩雑な上に、其々の手続きには期限が存在します。

遺産相続で、期限切れのリスクをしょい込まない為には、何を、いつまでにどの様に行うのか?何を優先して行うのかを、事前に知っておく必要があります。

多くの財産を相続する場合は、相続開始後10ヶ月以内に相続税の申告が必要になります。
多くの負債がある時は、相続開始後3ヶ月以内に相続放棄の手続きを行う事ができます。
遺贈や贈与などで自身の権利が侵害された時の遺留分減殺請求手続きにも期限があります。

相続手続き期限を過ぎてしまう事で、負債を相続してしまう、相続できるはずの財産を相続できない、税の申告が遅れる事で、追徴課税や「配偶者の相続税軽減」、「小規模住宅地の課税価格の特例」「農地等の相続税猶予」などが受けられなくなります。

この様な問題が起こらないようにするためには、各相続手続きの期限を知り、必要な手続きを期限内に完了する事です。

遺産相続が開始したら最初にやるべき3つの事

1、遺言書の確認

被相続人が遺言書を残しているか、いないかを確認します。
遺産の種類、分配の方法が書かれていれば原則的に遺言に従って遺産分割(財産の振り分け)を行います。
遺言書がないときは、相続人同士で話し合い財産を分配します。

これを「遺産分割」といい、遺産を分けるために「遺産分割協議」を行います。

遺言書の確認を行わないリスク

相続終了後に遺言書が見つかった場合、遺言書の内容によっては相続のやり直しが必要になることもあります。

遺言書が存在するかどうかは必ず確認してください。

2、相続人の特定

相続人は、亡くなった方(被相続人)の親等によって相続の順番が決まります。
そのため、誰が相続人であるかを特定(証明)しないと相続を行う事ができません。

相続人の特定を行わないリスク

相続の完了後に、別に相続人がいた事が分かったときは、相続のやり直しが必要になることもあります。

相続のやり直しは労力と時間、費用が必要になる事から相続人が誰なのかは、必ず確定しておく必要があります。

また、被相続人(故人)が生前、離婚をしていたり、転居を繰り返していた場合は、被相続人の出生から死亡するまでの戸籍を、生活した地域毎に全て調査し、相続人が誰なのかを漏れなく特定します。

3、相続財産の調査と特定

相続するべき財産の特定と確認を行いますが、相続の対象になるものは、貯金や不動産、有価証券など、金銭的な価値があり相続人にとってプラスになる財産だけだとは限りません。

財産の特定を行わないリスク

被相続人が借金を残して亡くなった場合は、それらの負債も全て相続しなければなりません。

プラス財産や負債などのマイナス財産がどの程度あるかを調査し、負債が多い時は、相続開始から3ヶ月以内であれば、相続放棄の手続きを行うことができます。

相続税が発生しそうな時は、相続税対象財産の確定を行わなければなりません。

相続税の申告は、相続開始から10ヶ月以内に財産を確定し相続税の申告を行う必要があります。

期限内に相続税の申告ができない場合は、管轄の税務署に届け出を行い、税務署長から申告期限の猶予を許可してもらい、法定相続分での暫定的な申告を行い遺産分割協議完了後に修正申告を行う必要があります。

遺言書の確認、相続人の特定は相続開始から3ヶ月以内

遺言書

・遺言書の確認   相続開始から3ヶ月以内
・相続人の特定   相続開始から3ヶ月以内

遺言書の確認、相続人の特定を相続開始から3ヶ月以内に行う必要があるのには、相続方法の決定と関わりがあります。

相続財産の確定は3ヶ月を超えても大丈夫?

相続財産の確定は、相続開始から3ヶ月以内とは限りませんが、こちらも、相続方法の決定や相続税の申告と大きく関わってくるため相続開始から可能な限り、速やかに特定する事が賢明だと言えます。

相続方法の意思決定は相続開始から原則3ヶ月以内です

相続人は、被相続人の財産を相続するのか、それとも放棄するのかを3ヶ月以内に決定しなければなりません。

相続方法の種類と選択期間

相続の単純承認(たんじゅんしょうにん)

相続人は、相続するか、しないかを選択する権利を持っています。

「限定承認」・「相続放棄」の申請手続きをしなければ、自動的に「単純承認」したことになります。

相続の限定承認(げんていしょうにん)

負債などのマイナス財産より明らかに、プラス財産が多い場合、全て相続し、プラス財産から負債を弁済して、残った財産があれば、それを相続する事になります。

相続の「限定承認」は、相続する財産の内、プラス財産とマイナス財産の割合が明確でない時に相続方法として選択する事があります。

相続開始から、原則的に3ヶ月以内に申請手続きが必要です。

相続放棄(そうぞくほうき)

相続を放棄するわけですから、それなりの理由があることになります。

相続人が相続放棄をする主な理由は、故人に大きな負債があったり、相続をしても後々大きな負担になりそうな土地(山林・廃屋)があるなど、相続する事がデメリットになる場合、相続人は、相続放棄の手続きを経て相続の権利を放棄する事ができます。

相続放棄が受理されると、その方は、最初から相続人ではなかったとされる為、次の相続順位者に相続権が移ります。

その為、相続放棄を行う場合は、次の順位の相続人に、相続放棄を行う事を知らせておく必要があります。

相続開始から、原則3ヶ月以内に相続放棄の申請手続きが必要です。

相続方法の種類と手続き期限

相続手続き期限

・相続の単純承認 相続開始後特別な手続きは必要ありません
・相続の限定承認 相続開始後3ヶ月以内に手続きを行います
・相続放棄    相続開始後3ヶ月以内に手続きを行います

被相続人(故人)の所得税申告は相続開始から4ヶ月以内

被相続人(故人)が死亡した年の1月1日から死亡するまでの間に取得した給与やその他報酬があった場合、相続の開始から4ヶ月以内に管轄の税務署に申告をしなければなりません。

相続税が発生する時は相続税の申告期限に注意

相続税

被相続人の財産の額によっては、相続税の申告が必要です。

平成27年1月1日以降、相続税の改正により、相続税基礎控除が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」 で計算するように変更になりました。

法定相続人が4人で計算すると

3,000万円+600万円×4人=5,400万円

相続財産8,000万円 の場合 基礎控除額が5,400万円で、相続財産の方が控除額を上回るので相続税が発生します。

改正前は、「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」

5,000万円+1,000万円×4人=9,000万円ですから、相続財産が上記の例と同じ場合、相続税は発生しません。

改正前と後では、4割程の違いがある事から、相続税の改正により、今後相続税の対象者が増える事が予想される事から注意が必要です。

相続財産の確定~申告までの期限は10ヶ月以内

相続税が発生するかしないかは、相続する遺産の全貌と、相続人の数が特定できないと判断できませんので、早い段階で、財産の特定、相続人の特定を行い相続税の申告が必要かどうかを知っておく必要があります。

相続税は、相続人其々が対象になる事から、相続税申告期限前に、遺産分割協議を行い、誰が何を相続するのかを決めておかなければなりません。

相続税軽減に関する申告期限は3年以内

配偶者の相続税軽減

配偶者の税額の軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。

(注)この制度の対象となる財産には、仮装又は隠蔽されていた財産は含まれません。

・1億6千万円
・配偶者の法定相続分相当額
国税庁ホームページより引用

小規模住宅地の課税価格の特例

個人が、相続又は遺贈により取得した財産のうち、その相続の開始の直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地等又は被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち、一定の選択をしたもので限度面積までの部分(以下「小規模宅地等」といいます。)については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合を減額します。この特例を小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例といいます。

なお、相続開始前3年以内に贈与により取得した宅地等や相続時精算課税に係る贈与により取得した宅地等については、この特例の適用を受けることはできません。

(注)
1、被相続人等とは、被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族をいいます(以下同じです。)。
2、宅地等とは、土地又は土地の上に存する権利で、一定の建物又は構築物の敷地の用に供されているものをいいます。ただし、棚卸資産及びこれに準ずる資産に該当しないものに限られます(以下同じです。
国税庁ホームページより引用

農地等の相続税猶予

農業を営んでいた被相続人又は特定貸付けを行っていた被相続人から一定の相続人が一定の農地等を相続や遺贈によって取得し、農業を営む場合又は特定貸付けを行う場合には、一定の要件の下にその取得した農地等の価額のうち農業投資価格(農業投資価格は、国税庁ホームページのホーム画面の「路線価図」の中で確認することができます。)による価額を超える部分に対応する相続税額は、その取得した農地等について相続人が農業の継続又は特定貸付けを行っている場合に限り、その納税が猶予されます(猶予される相続税額を「農地等納税猶予税額」といいます。)。
この農地等納税猶予税額は、次のいずれかに該当することとなったときに免除されます。
なお、相続時精算課税に係る贈与によって取得した農地等については、この特例の適用を受けることはできません。

◎免除される場合
(1)特例の適用を受けた農業相続人が死亡した場合
(2)特例の適用を受けた農業相続人が特例農地等(この特例の適用を受ける農地等をいいます。)の全部を租税特別措置法第70条の4の規定に基づき農業の後継者に生前一括贈与した場合
※特定貸付けを行っていない相続人に限ります。
(3)特例の適用を受けた農業相続人が相続税の申告書の提出期限から農業を20年間継続した場合(市街化区域内農地等に対応する農地等納税猶予税額の部分に限ります。)
※特例農地等のうちに都市営農農地等を有しない相続人に限ります。
国税庁ホームページより引用

遺留分減殺請求期限(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)

遺留分減殺請求は、正式な遺言書(公正証書)などにより、被相続人(故人)が、法定相続人以外の者(愛人等)にほとんどの遺産を遺贈する等の遺言があった場合、本来の法定相続人が財産を相続することができません。

この様な時の為に、法定相続人(遺留分権利者)には「遺留分を請求」する権利が与えられていて、この事を「遺留分減殺」と言います。

相続財産は、本来ならば、被相続人が生前に築き上げたものですから、本人の死後、遺言書などで、自由に財産を分配する事ができますが、本来の法定相続人以外の第三者に譲るとなると、一般的には大きな問題となる為、法定相続人に最低限の遺産を保証するもです。

遺留分が認められる相続人

遺留分が認められるのは、兄弟姉妹以外の相続人となります。

遺産相続での各相続人の遺留分割合

配偶者のみ 法定相続分の1/2

子のみ   法定相続分の1/2

親のみ   法定相続分の1/3

兄弟姉妹  遺留分はありません

子・親など相続人が複数いる時は、人数で割ります。

兄弟姉妹以外にも遺留分減殺請求の権利がない者

・相続欠格者
・相続人廃除の扱いを受けた者
・相続放棄をした者

遺留分減殺請求の時効

遺留分減殺請求には、「時効」1年と「除斥(じょせき)」10年があります。

相続開始時から1年で時効になります

遺贈や贈与などのにより、減殺請求するべき贈与があった事を知った時から1年間行使しないと時効によって消滅してしまいます。

これは、相続が開始し、減殺請求するべき贈与があった事を知っていた場合を対象にしています。

相続開始時から10年で除斥(じょせき)となります

相続の開始を知ってから消滅するため、何らかの事情により、相続が開始したことを知らなかった場合消滅時効期間は進行しません。

その為、1年を経過しても、例えば、相続の開始から5年たって遺贈や減殺請求するべき贈与があった事を知った時は減殺請求できます。

何も知らないまま、10年間を経過してしも除斥(じょせき)期間によって消滅します。

まとめ

相続では、相続開始から3ヶ月以内にやるべきことが沢山ある為、優先順位を決めて進める事が重要です。

・相続手続きで期限が何時までなのかをしっかり把握しておく。

・何を優先してやらなければならないか順位を決める。

・期限を過ぎそうになったら、慌てずに回避策を検討する。

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