2017/08/07
【遺産相続】紛争を未然に防止!弁護士に依頼するメリット・デメリットとは?
遺産相続は、当事者だけで解決しようとすると、大きなトラブルに発展することもあります。
「自分の家は仲がいいから大丈夫」と思っていても、被相続人の死後に予期せぬ問題が起きることもあるのです。
また、遺産相続にかかる手続きはかなり複雑で、期限もあります。
そのため、遺産相続をスムーズに期限内に進めるためには、専門家に相談するのがおすすめです。
今回は、
- 遺産相続で起きやすい問題
- 遺産相続では、どんな専門家に相談できるのか
- 遺産相続において、弁護士ができること
- 弁護士に遺産相続を依頼するメリット・デメリット
被相続人の死後に予期せぬ問題が起きる?
被相続人(相続財産を残して亡くなった人)が生きている間は表面化しなかった問題が、被相続人の死後に急に浮き出てくることがあります。
「たいした財産もないし、うちはみんな仲が良いから相続で揉めることはない」と思っていても、予期せぬ問題が発生することもあるのです。
たとえば、
-
というケースでは、予期せぬ問題が発生する可能性が十分あります。
相続額が多いほど揉める傾向が少ない?
遺産相続によるトラブルは、年々増加傾向にあります。
相続で揉めるのは、資産家だと思いますよね?しかし、意外にも、財産が5000万円以下の相続でのトラブルが急増しています。
なぜなら、相続財産が5000万円以上ある人は、早めに専門家に相談して、トラブル回避の対策を行っているからです。また、相続財産が多いと、相続人が複数いても財産を分けやすく、トラブルになりくいのです。
「財産額が5000万円以下の相続」でのトラブルが増加する原因の一つに、「複数の相続人」が、「分割できない土地や権利」をめぐって争うケースがあります。
遺産相続で揉める原因の多くは分割の難しい土地や家屋
家庭裁判所に持ち込まれる紛争の状況をみてみると、紛争原因の5割以上は「分割が難しい不動産」が占めています。
たとえば、東京都内にマンションや戸建住宅を持っていた場合、少なくとも数百万円~数千万円の価値はあります。
そのため、「誰がその財産を受け継ぐのか」ということは、相続人にとっては大きな問題です。
現金であれば分けやすいのですが、土地の場合はそうはいきません。
土地や家屋は、分割することで管理や権利が複雑化してしまうからです。
また、土地の管理や権利の複雑さが、次の相続で新たな紛争を生む原因になってしまうこともあります。
遺産相続手続きを依頼するなら弁護士?それとも他の士業職?
これまで説明してきたように、遺産相続には予期せぬトラブルがつきものです。
加えて、遺産相続は、専門用語も多く、かなりややこしい手続きになります。
手続きに不備があると、最初からやり直さなければなりません。
各種手続きに期限もあるため、時間をかけて手続きをしていくわけにもいきません。
そのため、ほとんどのかたは、士業職(専門家)に相続手続きを依頼します。
遺産相続の内容は多種多様
遺産相続は、「一つとして同じ遺産相続は無い」と言われるくらい、多様なケースがあります。
遺産相続手続きを行うためには、自身の相続の状況(内容)を十分に理解し、どの分野の専門家に相続手続きを依頼するのかを決める必要があります。
遺産相続の内容例
・財産のほとんどが預貯金どの専門家に依頼するかは、相続の内容次第です。・財産のほとんどが土地・家屋
・預貯金の他に土地がある
・被相続人に多額の借金がある
・相続人の数が多くてまとまらない
・被相続人に愛人や内縁関係の相手がいる
・相続人の誰かに事業を継がせたい
・他
あなたの遺産相続はどの専門家に依頼する?
相続手続きに必要な各士業名と主な業務
行政書士
主に、相続に必要な書類の作成や相続人の特定を行います。
- 籍謄本の取り寄せ
- 除籍謄本の取り寄せ
- 改正原戸籍の取り寄せ
- 住民票の取り寄せ
- 遺産分割協議書の作成
税理士
主に相続税に関する業務全般、相続税の申告を行います。
- 相続税の申告
- 相続財産の評価
- 準確定申告の申告
司法書士
主に登記に関する申請が必要な場合、不動産登記を行います。
- 不動産の名義変更
- 抵当権の抹消(生命保険で完済した場合)
- 銀行、証券など、各種財産の承継手続
- 遺言執行
- 遺言書の検認
- 遺言書作成
- 相続放棄手続き
弁護士
相続争いが発生した時、代理人として交渉を行う事ができます。
- 相続人間の争いに関する代理
- 遺産分割協議、調停の代理
- 遺言書作成、検認
- 遺留分減殺請求
- その他
自身の相続の内容を知ったうえで、適切な専門家に相続手続きを依頼する事が大切です。
遺産相続を弁護士に依頼する3つのメリット
遺産相続を弁護士に依頼するメリットは3つあります。
1、争いを予測し相続トラブルの未然防止が可能
2、法律のプロによる的確な状況判断ができる
3、法的に難しい交渉を任せることができる
経験を積んだ弁護士なら、相続争いの未然防止が可能
遺産相続では、
- 財産額
- 財産の種類
- 相続人の環境や立場
- 相続人の考え方や思い込み
「弁護士」と聞くと、争いが発生した「後」と思いがちですが、争いの未然防止にも活躍してくれるのです。
弁護士は、それぞれの「環境」「心理状態」「考え方」「環境」などを多方面から想定し、対処することに慣れています。
そのため、遺産相続における「過去の判例や事例」をもとに、状況判断を的確に行い、対処してくれます。
揉めそうな相続であっても、弁護士に対応してもらうことで、「相続争い」を未然に防ぐことができまるのです。
2、法律の専門家による的確な状況判断ができる
「弁護士に依頼するのは、揉め事が発生してからで良い」と考えている方もいると思いますが、実際に揉め事が起こった後では、遺産相続終了までに多くの時間や費用がかかります。
遺産相続では、時間と費用を無駄にしないためにも「揉めごとを起こさないための対策が必要」とよく言われます。
そのために、弁護士に的確な状況判断と調整を行ってもらう必要があります。
仮に、遺産相続で紛争に発展してしまっても、最初から弁護士が関わっていたことで、「紛争までの経緯」や「状況の把握」を速やかに行うことができます。
改めて弁護士を雇い直す必要もなくなりますし、トラブルの後の対応も検討しやすくなります。
3、法的な複雑な交渉を任せることができるのは弁護士だけ
法律的な交渉ができるのは、弁護士だけです。
遺産分割協議書の作成は、司法書士や信託銀行に支援を頼むことができます。
その一方、遺産分割協議の内容をめぐる交渉や、遺産分割調停・審判の代理人は、弁護士にしか引き受ける事ができません(※一部特別行政書士を除く)。
遺産分割協議で揉める相手は、ほとんどが親や兄弟姉妹です。
今まで仲良く暮らしてきた身内といがみ合ってしまっているときに、直接交渉することは避けたいですよね。
弁護士に交渉を頼めば、相続人は他の身内と直接会う必要がなくなり、心理的負担を軽くすることができます。
相続は始まってみないと何が起こるか分からない
他の相続人との比較や思い込みにより、自己中心的な意見を主張してしまい、相続の交渉が泥沼化することはよくあります。
このようなとき、弁護士が客観的に法的見解を示すことで、争いが沈静化することもあります。
遺産相続を弁護士に依頼するデメリット
これまで、「遺産相続を弁護士に依頼するメリット」を説明してきました。
一方、遺産相続を弁護士に依頼するときには、デメリットもあります。
1、費用が高くつく
2、他の相続人に警戒心を与えてしまう
デメリットも考えた上で、ご自分の相続の内容や状況に合わせて検討してみてはいかがでしょうか?
デメリットがあることもしっかり把握しておく事で、弁護士に相続を依頼するメリットを最大限に活かす事ができます。
1、費用が高くつく
弁護士に依頼する場合は、「費用がかかる」ということを念頭においておく必要があります。
弁護士費用は、「交渉・調停・訴訟」の有無によって変わってきます。
「交渉・調停・訴訟」といった弁護士にしか担当できない事案がある場合、その内容や財産の額によってさらに報酬が変わります。
逆に、「交渉・調停・訴訟」の必要がない相続手続きであれば、費用が極端に高くなることはないと言えます。
その場合、書類作成、手続き申請など、業務の内容や難易度により費用が変わってきます。
弁護士に相続の手続きを依頼するときは、予想される相続額と弁護士費用を計算し、相続人にとってメリットがあれば、弁護士に依頼しましょう。
最近は、初回相談無料の弁護士(法律事務所)も増えています。
弁護士への相談は以前より簡単になっていますので、相続に不安や疑問があれば、相談してみるのがいいでしょう。
2、他の相続人に警戒心を与えてしまう
みなさんは「弁護士」と聞いて最初に何を思い浮かべますか?
「弁護士=紛争の解決や裁判での弁護する人」であると思っている方は多いと思います。
あなたが相続人で、「弁護士を雇ったよ」と他の相続人に話したとしたら、他の相続人はどう思うでしょうか?
「弁護士を雇って自身の相続を有利に進めようと考えている!」と勘ぐられ、他の相続人との間に溝を作ってしまう可能性もあります。
遺産相続を弁護士に依頼するメリットの一つに、「相続トラブルの未然防止」というものがありますが、弁護士を依頼したことで他の相続人との間で溝が出来てしまっては「本末転倒」ですよね。
そのため、弁護士に相続を依頼するときは、「なぜ弁護士に相続を依頼しなければならないのか」を他の相続人に十分説明を行い、理解を得る必要があります。
また、紛争があった場合、弁護士は紛争の当事者2人から依頼を受ける事はできません。
弁護士をどちらかの相続人に立てれば、遺産相続において一方には利益になるが、もう一方には不利益になってしまう場合もあります。
まとめ
遺産相続には予期できないトラブルが起こることもあり、手続きも複雑なため、専門家に相談するのがおすすめです。
遺産相続の内容は、千差万別ですので、相続の内容を把握して必要な専門家を検討しましょう。
法的な交渉ごとは弁護士しか担当できない分野です。
弁護士に依頼することで、遺産相続で起きうるトラブルを未然に防止することができます。
弁護士費用や他の相続人の影響を考慮しながら弁護士に手続きを依頼することで、心理的負担や手続きにかかる負担がぐっと減るでしょう。
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