債務(借金)なんて相続したくない!遺産相続の選択「相続放棄」とは?

 
相続で様々な重いい荷物を背負う

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「法定相続人」は、被相続人(亡くなった方)が残した遺産(財産)を受け継ぐ義務と権利があります。

もし、被相続人(ひそうぞくにん)に債務(借金)があった場合、必ず相続しなければならないのでしょうか?

「法定相続人」になられる方は、自分の意思に関係なく、相続人となることから、精神的、物理的負担を軽減するため、遺産の内容や状況によって、相続の方法が選べるようになっています。

 

法定相続人が選べる相続方法の選択肢の中には「相続放棄」(そうぞくほうき)というものがあります。

「相続放棄」(そうぞくほうき)は、債務(借金)が被相続人にあった場合や、他に事情があって相続を辞退したい時、決められた期限内に「相続放棄」(そうぞくほうき)の申述(手続き)をし、認められる事で、その方は「最初から相続人ではなかった」とする制度です。

 

遺産相続を辞退したい方にとって「相続放棄」(そうぞくほうき)はメリットが有りますが、注意点などもあります。

こちらでは「相続放棄」(そうぞくほうき)の概要や手続き方法、注意点など説明させて頂きますので、参考にしてみてください。

法定相続人が選べる相続方法3つの選択

法定相続人は、自己の相続が開始した時には、相続をするかしないかの選択権を持っています。

相続が開始した場合,相続人は次の3つのうちのいずれかを選択できます。

 

1、相続の単純承認

法定相続人が被相続人の土地の所有権等の権利や債務(借金)など義務や権利をすべて受け継ぐ。

2、相続の放棄

最初から相続人ではなかったことになる為、相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない。

3、相続の限定承認

相続する財産で債務や遺贈を支払ってもまだ、プラスの財産が残る時に選択します。

 

 

相続放棄(そうぞくほうき)とは?

 

相続を拒む女性

被相続人が残した「遺産」は必ずしも相続人にとってメリットがある財産だけとは限りません。

「法定相続人」であっても、「遺産」を相続したくない事情や状況もあります。

遺産相続をしたくない、相続を放棄したい時、相続人は「相続放棄」(そうぞくほうき)を選択する事ができます。

 

第939条
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

 

相続放棄を申述し、受理された者は、初めから相続人でなかったものとみなされ、被相続人に債務(借金)があっても、その債務を引き継ぐことはありません。

※プラス財産(貯金、土地など)があったとしても引き継ぐ事はできません。

 

相続放棄(そうぞくほうき)をする理由

 

相続放棄の理由として、1つは、被相続人が残した債務(借金)が挙げられますが、相続放棄の理由は必ずしも、債務(借金)だけではありません。

 

相続放棄申述受理申立書には、相続放棄申述の理由として予め以下の6つの項目が用意されています。

1、被相続人から生前に贈与を受けている2、生活が安定している

3、遺産が少ない

4、遺産を分散させたくない

5、債務超過のため

6、その他(1~5に該当しないときに記入)

 

相続放棄(そうぞくほうき)の申述手続き期間

 

相続放棄の申述期限は、相続人が、自分のための相続の開始があった事を知った時から「3ヶ月以内」と民法により定められています。

 

相続放棄以外の相続方法の申述手続き期間(参考)

 

  • 相続の「限定承認」の申述手続きも上記の「相続放棄」と同様とされています
  • 相続の「単純承認」は、「相続放棄」や「限定承認」と異なり特別な手続きは必要ありません

 

何もしなくても、相続の開始を知ってから3ヶ月が経過することでその相続人は自動的に「単純承認」したものとみなされます。

 

3ヶ月が経過してしまった時の相続放棄(そうぞくほうき)の申述

 

民法により、相続放棄の申述手続きの期間は自己のための相続を知った時から「3ヶ月以内」に申述手続きを行わなければならないと定められていますが例外もあります。

 

この、3ヶ月の期間は、「熟慮期間」(じゅくりょきかん)とされていて、この期間内に相続人の特定や、相続財産の内容を調べ、相続方法を選択する期間としていますが、状況によっては、3ヶ月とゆう期間で被相続人の財産を全て把握する事が困難な場合もあります。

 

そのような時は、管轄の家庭裁判所に事前に状況を説明して、期限を伸ばしてもらうこと事ができる場合もあります。

民法第915条第1項

相続人は,自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に,相続について,単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし,この期間は,利害関係人又は検察官の請求によって,家庭裁判所において伸長することができる。

 

しかし、全ての伸長(延長)が認められるわけではありませんので、決定期限までに「相続放棄」の選択が難しい時は、早めに弁護士など法律の専門家に相談することをお勧め致します。

 

相続放棄(そうぞくほうき)の申述(手続き)方法

 

申述先被相続人の最後の住所地の家庭裁判所

家庭裁判所の管轄区域

申述に必要な費用

 

収入印紙800円分(申述人1人につき)
連絡用の郵便切手(申述先の家庭裁判所に確認してください。なお,各裁判所のウェブサイトの「裁判手続を利用する方へ」中に掲載されている場合もあります。)

 

申述に必要な書類

 

(1) 相続放棄の申述書

相続の放棄の申述書(20歳以上)

相続の放棄の申述書(20歳未満)

上記リンクより、PDFファイルのダウンロード、閲覧ができます。

(2) 標準的な申立添付書類

※ 同じ書類は1通で足ります。

※ 同一の被相続人についての相続の承認・放棄の期間伸長事件又は相続放棄申述受理事件が先行している場合,その事件で提出済みのものは不要です。

※ 戸籍等の謄本は,戸籍等の全部事項証明書という名称で呼ばれる場合があります。

※ もし,申述前に入手が不可能な戸籍等がある場合は,その戸籍等は,申述後に追加提出することでも差し支えありません。

※ 審理のために必要な場合は,追加書類の提出をお願いすることがあります。

【共通】

1. 被相続人の住民票除票又は戸籍附票

2. 申述人(放棄する方)の戸籍謄本

【申述人が,被相続人の配偶者の場合】

3. 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

【申述人が,被相続人の子又はその代襲者(孫,ひ孫等)(第一順位相続人)の場合】

3. 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

4. 申述人が代襲相続人(孫,ひ孫等)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

【申述人が,被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】

3. 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

4. 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

5. 被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母))がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

【申述人が,被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】

3. 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

4. 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

5. 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

6. 申述人が代襲相続人(おい,めい)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

出典:裁判所
相続の放棄の申述

 

相続放棄(そうぞくほうき)の3つの注意点

 

相続放棄(そうぞくほうき)の3つの注意点

1、相続放棄を行うと、次の順位の相続人に相続権が移ります

 

「法定相続人」が複数いる時は、次の順位の人が相続人となることから、「相続放棄」を行うことを知らせておく必要があります。

一つの例ですが、

被相続人に負債(借金)があった為、「配偶者である貴方」と「子供」が相続放棄をしたとします。

相続放棄が認められると、「貴方と子供」は最初から相続人ではなかった事になり、次の相続順位者に相続権が移ります。

今回のケースだと「配偶者と子供」が相続放棄をしているため、次の順位者である、被相続人の父母(健在であれば)に相続権が移り、負債を返済しなければならなくなります。

この場合、自分に順位が移ったことを知らなかったと、家庭裁判所に申し出て、相続放棄の申述を行い認められる可能性も有りますが、最初に相続放棄の相談をしなかった事で、親族間での人間関係が悪くなることも考えられます。

相続放棄を検討される時は、次の順位の相続人の事も考え事前に知らせておくことが必要です。

 

2、相続放棄をするなら遺品の取り扱いにも注意

 

被相続人が生前に所有していたものは、全ての相続人、共有の財産となり、相続人全員で遺産分割が終了するまでは、共同で管理、保管しなければなりません。

遺品=相続財の一部である事から、被相続人が残した遺品の一部を相続人の誰かが売ってしまったり、処分(移動)すると「相続放棄」が認められなくなります。

誰の目から見ても価値が無いものであれば、問題は無いとされていますが、「相続放棄」を検討するのであれば、その価値がはっきりするまで一切手を付けないことです。

遺品(形見)と財産の区別は、難しいところもありますが、貴金属やブランドバッグ、など一般的に金銭的な価値があるものは特に注意が必要です。

賃貸マンションやアパートで被相続人が亡くなった場合、賃料が発生することもあり、早めに退去したいと思いますが、状況によって、相続放棄を検討しなければならない時は、弁護士などの法律の専門家に相談する必要があるかもしれません。

 

3、一度相続放棄が認められると撤回できない

 

被相続人の負債(借金)を理由に相続放棄を行い、認められた後に、実は、負債を遥かに上回る財産があったことが分かっても一度認められた相続放棄を撤回する事はできません。

相続放棄の申述(手続き)をする前に、被相続人が残した遺産を確実に調べるようにする必要があります。

 

まとめ

 

「相続放棄」の申述手続きは、自己のための相続が発生してた事を知ってから3ヶ月以内に行います。

 

相続の内容や状況によっては、事前申請で期限伸ばすこともできますが、全てが認められるとは限らないため、期限の伸長が必要な時は弁護士などの法律や交渉の専門家に相談しましょう。

 

「相続放棄」をすると、次の相続権利者が相続人となるため、次の順位の相続人がいる時は、その方にも自身が「相続放棄」を行うことを伝えておく必要があります。

 

相続放棄を検討するときは「遺品」の取り扱いにも十分に注意しましょう。

 

いかがでしたでしょうか。

「相続放棄」の概要や申述期限、手続き方法などをご紹介ししました。

相続の開始を知ったら、「熟慮期間」の3ヶ月を過ぎないよう早めに自身の相続の状況を把握し、必要な手続きを行いましょう。

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