2017/09/17
代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは?ポイントと注意点を詳しくお話しします。
遺産相続は、親の遺産がその子供へ相続されるのが一般的ですよね。
でも、状況や環境が変わり、相続する方が変わる場合があります。今回はその事をお話ししていこうと思います。
本来の相続人に代わって相続できる制度「代襲相続」
一般的な相続の順番はこうです。
- 被相続人の配偶者(常に相続人)
- 被相続人の子供(第一順位)
- 被相続人の親・祖父母(第二順位)
- 被相続人の兄弟姉妹(第三順位)
このように、法定相続人と相続できる順番が法律で決められています。
しかし、近年は生活環境、食生活の変化、医療の進歩により、親が子供より長生きをし、親の財産を相続する前に、法定相続人(この場合子供)が、先に亡くなってしまうこと事もあります。
他にも「相続人排除」「相続欠格」という理由で相続権を失ってしまう事もあります。
被相続人(亡くなった方)の財産を相続する方が存在しない時は、その方の財産は、国庫に入ります。
民法第959条
「相続する者がいない相続財産は最終的に国庫(財務省)に帰属する」
上記は、親・配偶者・子供・兄弟姉妹などが全く存在して居ない場合です。
相続人は居たが、「死亡・相続欠格・相続排除」で相続権を失った場合は、その方に代わって被相続人の財産を、しかるべき相続人が相続できるように考慮した制度「代襲相続」があります。
代襲相続とは?(だいしゅうそうぞく)
財産を残す方(被相続人)よりも先に、被相続人の子供が亡くなっていたり、相続欠格・相続排除で相続権を失った場合に、その孫やひ孫が、本来の相続人に変わって相続人となり財産を受け継ぐ制度です。
しかし、「代襲相続」は、相続権を持った全ての相続人に適応される制度ではありません。
「代襲相続」については、少し分かりずらいところもある事から、こちらではポイントや注意点を説明させて頂きます。
代襲相続が発生する原因は、以下の理由によります。
- 被相続人の「子共」が親の相続開始前に「死亡・相続欠格・相続排除」があった時
- 相続の順番が回ってきた被相続人の兄弟姉妹に「死亡・相続欠格・相続排除」があった時
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
推定相続人(すいていそうぞくにん)の排除
被相続人(亡くなった方)に対して、虐待をしたり、屈辱を加えた時などは、家庭裁判所に推定相続人の廃除を請求する事が出来ます。
民法第892条・条文・(推定相続人の廃除)
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
民法第893条・条文・(遺言による推定相続人の廃除)
被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
相続欠格(そうぞくけっかく)
相続人を死亡するに至らせたり、強迫・詐欺行為を行ったり、強迫によって遺言を撤回させるなどの行動をとった場合、『相続欠格』という状態になります。
民法第891条・条文(相続人の欠格事由)
次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
数次相続(すいじそうぞく)とは?
最初に父(被相続人)相続完了前に配偶者(母)が亡くなった場合、母親の相続財産の中には、本来相続するはずの父親の財産も含まれることになります。
ですので、父・母 → 子は2回の相続分を話し合う必要があります。
この様に、相続が2回以上重なっている状態を数次相続といいます。
数次相続は複雑になる事が多いため、法律の専門家(弁護士等)に相談される事をお勧め致します。
「代襲者」になって財産を相続できる相続人とその範囲
代襲相続に係ってくる方々を「代襲相続人」と「被代襲者」と言います。
- 相続権を失ったひとの相続分を受け継ぐ制度・・「代襲相続人」
- 本来、相続人となるべきであった者(相続権を失った者)・・「被代襲者」
先にも触れましたが、代襲相続は、法定相続人であれば、誰でも適応されるわけではありません。
代襲相続の対象となる相続人「直系卑属」(ちょっけいひぞく)の場合
「直系卑属」(ちょっけいひぞく)は、「自分から見て下の世代にあたる人達」の事です。
自分 → 子 → 孫 → ひ孫 →
直系卑属(ちょっけいひぞく)の代襲相続の特徴
直系卑属の代襲相続は、被相続人の孫、ひ孫、玄孫・・と対象者がいる限り永久に代襲相続が起こります。
この事を「再代襲」 と言います。
直系卑属の代襲相続の流れ
下の図は、被相続人が無くなる前に、被相続人の「長男」が既に亡くなっている前提での説明になります。
直系卑属(孫)の代襲相続の例
被相続人A(父)には、子供1、が居ましたが、子供1は、被相続人A(父)の相続開始前に既に亡くなっています。
亡くなった子供1には子供が一人居ます。
※子供1の子供は、被相続人A(父)から見て孫になります。
この場合、子供1(被代襲者)の「代襲者」としてその子供(孫)が「代襲相続人」となります。
※被相続人A(父)より先に亡くなった子供1の相続は完了しています。
上の例だと、配偶者(母)と子供1の代襲者(孫)の二人が相続人になります。
兄弟姉妹の子供(姪や甥)の代襲相続の場合
相続順位が一番最後(第三順位)である兄弟姉妹に相続権が回ってきた時。
兄弟姉妹が死亡、相続欠格または廃除によって相続権を失っていた場合には、その兄弟姉妹の「直系卑属」である子が代襲相続することになります。
兄弟姉妹の代襲相続の流れ
次男(配偶者存命)が亡くなりましたが、次男の子供(第一順位の相続人)は次男の死亡以前に亡くなっています。
第二順位の相続人である、次男の父と母も既に亡くなっています。
その為、第三順位の相続人である、被相続人の兄弟姉妹が相続人となりますが、長男が既に死亡している為、長男の子供(甥又は姪)が長男に代わって「代襲相続人」となります。
上の例だと、次男の配偶者と長男の代襲者(甥又は姪)の二人が相続人になります。
※既に亡くなった方がたの相続は終了している前提です。
兄弟姉妹の子供が代襲相続する時の「再代襲」
兄弟姉妹の子供の代襲相続では、「再代襲」はありません。
兄弟姉妹の「代襲相続」は被代襲者の子供(直系卑属)までで、被代襲者の子供に子が居たとしても、その子が「再代襲」することはできません。
したがって、甥や姪の子供が、相続権を得ることはありません。
今回は、次男が亡くなりました。
父、母共に(第二順位の相続人)既に他界している為、相続人は、次男の配偶者と、次男の子供になりますが、次男の子供(第一順位の相続人)も亡くなっています。
その為、第三順位の兄弟姉妹に相続権が回ってきますが、長男も既に死亡していて、その子供も既に亡くなっています。
長男の亡くなった子共には、子が居ますが、兄弟姉妹に再代襲はありませんので、代襲相続できる相続人は誰も居ない事になります。
今回のケースでは、次男の妻だけが相続人となります。
※既に亡くなった方がたの相続は終了している前提です。
※甥・姪には、代襲相続はありますが、遺留分はありません。
以前は、兄弟姉妹の「代襲相続」にも「再代襲」が認められていましたが、昭和55年(1980年)で廃止されています。
しかし、法律で兄弟姉妹の代襲相続にに再代襲を認めていた時(昭和55年12月31日以前)に始まった相続は、兄弟姉妹が相続人の場合でも再代襲相続が開始されますので注意が必要です
養子の子供の代襲相続
被相続人と生前に養子縁組をしておけば、被相続人の財産を実子と同じ割合で相続することができまるため、一見、「代襲相続」においても問題が無いと考えてしまうかもしれませんが、「養子の子供の代襲相続」は、「代襲相続人」となる子供がいつ生まれたのかが重要になります。
- 養子縁組前に生まれた養子の子 → 代襲相続できない
- 養子縁組後に生まれた養子の子 → 代襲相続できる
養子縁組前に生まれた養子の子は、連れ子などの例が考えられます。
「代襲者」になれない相続人
「配偶者」、「直系尊属」(ちょっけいそんぞく)「被相続人の父母、祖父母」に代襲相続はありません。
- 直系尊属(ちょっけいそんぞく)「被相続人の父母、祖父母」
- 配偶者
「直系尊属(ちょっけいそんぞく)」は、「自分から見て上の人達(ご先祖)」の事です。
・・・曾祖父 ← 祖父母 ← 父母 ← 自分
配偶者の代襲相続
代襲相続が認められる相続人は、被代襲者の子(直系卑属)または兄弟姉妹が「被代襲者」となります。配偶者には、義理の親の遺産を相続する権利はありません。
被代襲者であった配偶者との間に、子供がある場合は、その子供には代襲相続権が認められます。
もし、「義理の親」の財産を相続をしたいのであれば、生前に遺言書に指定しておいてもらう必要があります。
相続放棄を行った場合の代襲相続
相続放棄を申述し認められた方は、「最初から相続人でなかった」事になります。
最初から相続人でなかった訳ですから、相続放棄をした方に、子供がいたとしても、その子供には「代襲相続」は起こりません。
代襲相続人の相続分
代襲相続人の相続分は、本来の相続人が受け取る分の相続割合と同じになります。
ここで、色んな場合の代襲相続を見て見ましょう。
被相続人の遺産「1,000万円」配偶者:500万円
長男:死亡(被代襲者)
子供1:250万円(代襲相続人)
次男:250万円
被相続人の遺産「1,000万円」配偶者:500万円
長男:死亡(被代襲者)
子供1:250万円(代襲相続人)
次男:250万円
被相続人の遺産「1,000万円」配偶者:なし
子供:なし
被相続人の兄:死亡(被代襲者)
甥:1,000万円(代襲相続人)
被相続人の遺産「1,000万円」配偶者:500万円
長男(実子):250万円
養子1:死亡(被代襲者)
養子縁組後に生まれた子供:250万円(代襲相続)
この様になります。
まとめ
- 相続放棄を行った時は「代襲相続」の制度は適応力されません
- 代襲相続の対象になる相続人は、被相続人の「子供の子供」直系卑属(ちょっけいひぞく)と被相続人の兄弟姉妹の子供(甥、姪)に限られます
- 兄弟姉妹の子供には、「再代襲」はありません
- 代襲相続人の相続分は、通常の相続と同じ割合になります
いかがでしたでしょうか?
代襲相続人となれる方には適応範囲があり、又、被相続人(亡くなった方)との関係性が薄い世代の方が相続人となる事もあります。
代襲相続での問題点は、普段あまり会った事も無い方が相続人になる可能性が高いため、相続紛争になる事もあり、法律の専門家を交えて話し合いをしていくのがベストと言えます。
遺産相続は、長期化すればするほど、デメリットが多くなります。
相続で「代襲相続」が発生したら、こちらの記事を参考にしてみて下さい。
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