数次相続とは?基礎知識から回避法まで総まとめ!代襲相続や相似相続との違いも解説
前の相続が完了していないのに、次の相続が発生してしまうことを「数次相続」(すうじそうぞく)と言います。
たとえば、先に亡くなった被相続人の相続が完了する前に、その相続に関わる「相続人」が死亡してしまったとき。
この場合、相続が2つ同時に発生することになるので、「数次相続」となります。
このように、「数次相続」では、複数の相続が同時に起こり、手続きがややこしくなってしまいます。
今回の記事では、「数次相続」に関する問題や回避法について、詳しく説明したいと思います。
こちらの記事は、下記の情報を知りたい人におすすめです
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- 数次相続の具体的な例
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- 数次相続の問題点
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- 数次相続が起こる原因と回避方法
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- 相似相続と数次相続の違い
- 代襲相続と数次相続の違い
数次相続の基礎知識
まず、一般的な相続と数次相続の違いを具体例を見ながら比較してみましょう。
例-1、父が被相続人の一般的な遺産相続の場合
被相続人
父 2015年10月死亡
法定相続人
配偶者(母)
子供2人(A、B)
上記の例は、一般的な遺産相続です。
法定相続人は、被相続人の配偶者(母)とその子供(A、B)の2人の合計3人が「相続人」となります。
例-2、父の相続が完了する前に、相続人が死亡した数次相続の場合
被相続人
1、父 2015年10月死亡(最初の相続)
2、子供 A 2017年8月死亡(最初の相続未完了で死亡)
※子供 Aの死亡により「数次相続」が発生
※子供Aには、妻と子供(C、D)がいます
法定相続人
一回目の相続に係る相続人(1、父の相続での法定相続人)
配偶者(母)
子供(B)
二回目の相続に係る相続人(2、子供Aの法定相続人)
Aの妻
Aの子供2人(C、D)
(※子供Aの法定相続人であるが、父の相続での法定相続人でもある)
上記の例は、父の最初の相続が完了する前に、相続人である子供Aが亡くなってしまい「数次相続」が発生した例です。
「数次相続」が発生したら、最初の相続で決まっていない子供Aの相続分を決める必要があります。
そのため、亡くなった子供Aの妻とその子供(C、D)も亡くなった子供Aの代わりに最初(父)の遺産分割協議に加わります。
最初の相続では、父の配偶者(母)と子供2人(A、B)の3人が相続人でしたが、「数次相続」が発生することで、子供Aの妻とその子供(C、D)が加わり5人に増えることになります。
このように、「数次相続」は、相続人が増えることで、様々な問題がでてきます。
数次相続の問題点
「数次相続」では、複数の遺産相続が重なるため、相続人の数が増えることが予想されます。
相続人の数が増えることで、遺産分割協議での各相続人間の調整が困難になったり、相続できる財産の額にも影響が出てきます。
以下で詳しく見ていきましょう。
数次相続が発生することで考えられる問題点
1、会ったこともない親族と遺産分割協議をすることになる可能性がある
2、相続人の特定に必要な戸籍の数が増え、相続人特定までに時間や費用が掛かる
3、遺産分割協議の参加者が増える事で話し合いをまとめることが困難になる
4、相続人が増える事で、登記の回数が増える可能性がある
5、相続人が増える事で、相続できる財産の額にも影響が出る
特に、分割の難しい不動産が関わる相続の場合は、相続人が増え続けると、大きな問題になります。
相続に不動産が絡んでいるときは、早めに不動産相続や登記の専門家に相談する事をお勧め致します。
数次相続が起こる原因と回避方法
数次相続が起こる原因
「数次相続」が起きる原因は、長期間、遺産分割協議を行わないで放置してしまうことにあります。
遺産分割協議が決まらなければ、年月の経過とともに、相続人は亡くなり、その結果、相続が確定しないまま、複数の相続(数次相続)が発生することになります。
遺産分割協議が終わらない原因を、いくつかご紹介しましょう。
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- コミュニケーション不足が原因で遺産分割が終らない
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- 他にも財産があるのではないかと不信感が原因で遺産分割が終らない
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- 相続財産の多くが分割が難しい不動産の為に遺産分割が終らない
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- 他の相続人への生前贈与が原因で遺産分割が終らない
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- 遺言書での偏った指定の為他の相続人が納得できずに遺産分割が終らない
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- 同居と別居の立場が理解できずに、話し合いにならず遺産分割が終らない
- 他の相続人の配偶者や親戚との不仲が原因で遺産分割が終らない
遺産分割が終わらない理由は、個々の事情や考え方が主な原因となっています。
数次相続を回避する為の方法
「数次相続」が起こるの原因の多くは、遺産分割協議が完了せず、その間に相続人が亡くなってしまうことです。
「数次相続」を回避するには、なんといっても、相続をできるだけ、早く完了させることです。
そのためには、
1、遺産分割協議を決して先送りにしない
2、遺産分割協議で揉めそうなら、遺言書を用意する
3、弁護士などの法律の専門家に早めに相談する
などの対応が必要です。
被相続人は、残された遺族(相続人)が財産をめぐって争いを起こす事を決して望んでいないはずです。
民法にも、遺産分割の基準について次のような条件があります。
「遺産の分割は遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」
WIKIBOOKS:民法第906条(遺産の分割の基準)
残されたご遺族の方々で、個々の相続人の環境や事情を考慮した遺産分割を行い、できるだけ早めに終了させることが、数次相続を回避する最善の方法と言えます。
また、「数次相続」と勘違いしやすいものに「相似相続」や「代襲相続」があります。
以下で、この二つについてご説明いたします。
相似相続(そうじそうぞく)と数次相続のちがい
一定期間(10年)内に連続して相続するということを「相次相続」と言います。
例えば、父が亡くなって相続が完了した2年後に母親が亡くなり、立て続けに相続が発生した場合などです。
「数次相続」との違いは、最初の相続(1次相続)が完了しているかいないかにあります。
相似相続 → 最初の相続は完了していて、その後10年以内に起こる相続
数次相続 → 最初の相続が完了していないのに次の相続が発生する相続
相似相続控除
相似相続控除は、1次相続で相続税を支払い、10年以内に起こる2次相続でも相続税を支払う必要がある場合に納税負担を軽減させるための制度です。
相似相続控除では、2度目の相続(2次相続)で、1度目に支払った相続税(1次相続)の一部を差し引くことができます。
代襲相続(だいしゅうそうぞく)と数次相続の違い
「代襲相続」は、本来の相続人が、死亡や相続欠格などにより、相続財産を受け取る事ができなくなった場合に、その者に代わって相続するといった制度です。
「代襲相続」なのか「数次相続」なのかによって、誰が法定相続人になるのかが大きく変わるため、しっかりと確認することが必要です。
被相続人が亡くなった順番の違いで「代襲相続」か「数次相続」になります。
「代襲相続」が発生すると、その「代襲人」(直系卑属・兄弟姉妹)だけが対象となりますが、「数次相続」では、相続人全員が対象になります。
代襲相続 → 被相続人よりも前にその相続人が亡くなり、相続権が相続人の子供に移ること
数次相続 → 最初の相続が完了していないのに次の相続が発生すること
代襲相続に関しては以下で詳しく説明しています。
まとめ
いかがでしょうか?
「数次相続」は、相続人にとってメリットはありません。
相続発生時には、なるべく早く遺産分割を完了させることが重要です。
発生して欲しくない「数次相続」を防ぐには、被相続人や、相続人となる方との日常的なコミュニケーションを通して、相続について話し合を行う事が重要だと言えます。
自分たちだけで、遺産分割協議を終わらせるのが難しい状況であれば、弁護士などの法律の専門家に早めに相談する事も検討されてはいかがでしょうか?
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